英国在住のパブロ・ナヴァレテ監督が2009年、ベネズエラの首都カラカスにカメラを持込み、市民貧困層に圧倒的な人気を得ていた ウーゴ・チャベス政権の実際を取材したドキュメンタリー映画。

　この映画で特に注目してほしいのは、マスメディアがベネズエラ社会で担った悪質な役割である。主要民間放送局はすべて、少数の寡頭 支配層の手の内にあり、ウーゴ・チャベスを失脚させるためにでっちあげやモンタージュ、扇動などのあらゆる手法を使ったデマ宣伝をテ レビで流し続けた。

　市民や学識者へのインタヴューをとおして、これらの経験を検証するこのドキュメンタリーは、私たちが日ごろどれほどマスメディアに 誘導されているかを考えるのに最適な資料でもある。

　また、若者の熱気あふれるヒップホップ・ミュージックを収録したり、美しいカメラワークで市井の人々を映し出したりと、映像面も楽 しい。
(2009 年作品 カラー 65 分、英語・スペイン語：日本語字幕付、ＤＶＤ発売中)

ベネズエラ年表

1494　コロンブス、ベネズエラ東部のパリア地方に上陸

1783　シモン・ボリバル、カラカスで生まれる

1811　ミランダ政府、ベネズエラの独立を宣言するも、すぐ崩壊

1813　シモン・ボリバル、第二共和国を樹立

1830　グラン・コロンビアからベネズエラ分離、第四共和国。12月ボリバル死去

1922　マラカイボ湖で油田が発見される

1958　プント・フィホ体制成立

1989　2月ペレス政権の新自由主義政策に対してカラカス暴動発生、一万人死亡

1992　2月ウーゴ・チャベス中佐、クーデターを起こすも失敗。逮捕投獄される

1994　チャベス釈放。ベネズエラ経済、深刻な金融危機

1996　チャベス、ボリバリアーナ代替計画を作成。愛国ポーロ戦線結成

1998　12月、チャベス56.2％を獲得して大統領に選出される

1999　12月、国民投票で68％の賛成を得て新憲法採択

2000　60.3％の得票でチャベス大統領に再選

2001　土地改革法・石油法など49の改革法制定

2002　チャベス、国家収入の5割を占める国営企業・ベネズエラ石油公社（PDVSA）
　　　　の経営管理に踏出す
　　　　旧体制派・一部反動軍部が米国支援でクーデター。失敗
　　　　反動派、PDVSA以下の有力企業でゼネスト（12月から翌年2月まで）

2003　チャベス、大土地所有制の一掃をねらい農業改革「サモーラ計画」
　　　　その他、貧困地区での無料医療活動やキューバ人医師2万人の導入、
　　　　150万人を対象に識字運動、貧困層大学希望者への支援などを実施
　　　　反対派、大統領罷免国民投票を要求する署名名簿を提出

2004　チャベス、2021年までに貧困をゼロにする「キリスト計画」に着手
　　　　大統領罷免要求投票でチャベス、59.09％を獲得勝利
　　　　チャベス、ロシア、イラン、キューバ、中国を歴訪

2005　ライス米国務長官、ベネズエラを「近隣諸国に悪影響を及ぼす否定的勢力」
　　　　と非難
　　　　カストロ議長、チャベス暗殺計画があるとブッシュ大統領を批判
　　　　地方行政区議会選挙、選挙人登録で69.1％が棄権
　　　　チャベス派候補の80％が当選
　　　　国会議員選挙。反対派はボイコットし、議員ゼロとなる
　　　　ベネズエラ、「文盲からの自由の地」を宣言

『革命のベネズエラ紀行』(新藤通弘著, 2006年発行)にある年表をもとに作成